2022.12.08

BLOG

②楽器・時代や作曲者ごとのスタッカート 後編

大雪

閉塞成冬

たいせつ

そらさむくふゆとなる

 

 

人間の生きる気温じゃありません

ごきげんよう 阿部です

 

 

 

 

前回

「モーツァルトの楽譜には

スタッカートがついていなくても 実際にはするよ」

 

「ベートーヴェンはスタッカートついてるのに

実際の演奏はしないよ」

という訳のわからないことを書きました

 

もう こうなってくると 何もかもが信じられないですね

 

スタッカートは「短く」ではない  から始まり・・・

弦楽器の「弓を飛ばす」は良くない

スタッカートついてないけど スタッカートしてる

スタッカートついてるけど スタッカートしてない

 

 

もうここまでくると「スタッカート」嫌いになってきましたよね?

 

そんな方に残念なお知らせです

 

スタッカートに限った話ではなく

楽譜の中に出てくる奏法記号は 全てにおいて

時代ごと 作曲者ごと 楽器ごと

色んな領域で その都度解釈が必要なのです

 

 

 

モーツァルトの曲を実際に聞いてみましょう

伴奏が軽快にリズムを刻んでいるのがお分かりいただけたでしょうか?

 

でも実際の楽譜はこうです

そう 楽譜には無くてもスタッカートつけて弾いてるんです

 

「たたたた」「たっ たっ たっ たっ」で弾いていますよね

 

ちなみにモーツァルトの直筆譜がこれです

はい よく分かりませんね

 

ただチェロの八分音符はスタッカート云々以前に いろいろ省略して書いてあります

 

「はい この音8個も書くのめんどいから 同じように八分音符で弾いておいてね」

というような書き方がしてあるんです

 

実はモーツァルトは基本的に

「まぁ 書いてないけど 普通そう弾くよねぇ? 書かなくてもフィーリングで分かるよね!?」

という天才肌ゆえのマウントを楽譜上で取ってきます

 

それに加え イメージで分かると思いますが

軽快な楽しい曲がこの人は多いゆえ

楽譜がスタッカートだらけになってしまう

 

モーツァルトは基本的に音の余韻が残らない演奏が好きだったようです

ですので モーツァルトの曲はあらゆる曲においてスタッカート気味に演奏することが多いです

 

 

 

さてそんな陽気なモーツァルトに対して

ベートーヴェンはどうでしょうか

 

交響曲7番の冒頭

ズンっとくる冒頭の和音

 

しかし実際の楽譜には しっかりスタッカートがついています

でも実際 普通の四分音符くらい長かったですよね

しかもスタッカートのように見えますが

なんか少しとがってますね

 

「スタッカーティッシモ」といわれる

スタッカートよりも鋭いスタッカートなんですね

 

書いてあることとやってることが違うじゃないですか と思っちゃうんですが

実はこれもスタッカーティッシモだったり普通のスタッカートだったり 出版社によって違い

もう何がほんとか分かりませんね

 

ただスタッカートには「際立たせて」という意味合いもありますし

モーツァルトの演奏を聴いたベートーヴェンが 「なんかスタッカートばっかり」

みたいなこと言ったらしいエピソードもあるらしく

もしかしたらベートーヴェンの中でのスタッカートというのは

「短く」とか「跳ねる」とかそういった物以上の特別な感覚なのかもしれません

 

 

というように

奏法記号というのは時代や作曲者によって

微妙に取り扱いが違うんではないか というお話しでした

 

この腑に落ちない感はテンポにも言えます

 

「アンダンテ ー 歩くような速さで ー」にしても

まぁ歩くの早い人も遅い人もいますからねぇ となりますよね

 

実はベートーヴェンはいち早くメトロノームを取り入れた人で

「これからは全ての作品に数字でテンポ表記をするぞ!」といったものの

どうやら もしかしたら目盛りの設定の仕方を間違ってたんじゃないか?という説があるくらい

曲調に合わないテンポ指定が多いのです 機械音痴だったのかな?

 

メトロノームの操作が煩わしく 自分の感覚で数字を書いていたんではないかという説もあります

 

せっかく感覚とかじゃなくて数字という普遍的な定義が出来たのに

その速度表記すら真偽の程は定かでない という本当に何もかも信じられませんね

 

 

 

さぁ次回

③空気を読んでスタッカートを解釈する

 

これだけ楽譜の解釈が違うんなら 再現する音楽も楽団によって違ってくるはず

楽団によって同じ曲でもどのようにスタッカートに違いがあるか

を見ていきます

 

 

ごきげんよう