2022.12.22
③空気を読んでスタッカートを解釈する
大雪
熊蟄穴
たいせつ
くまあなにこもる
ごきげんよう
阿部です
前回のブログでは
楽譜の奏法記号というのは
作曲家や時代によってニュアンスが違うときがあるとお話ししました
今日は同じ曲でも 奏者や楽器によってスタッカートの表現が違う
という事を見ていきたいと思います
まずはピアノの曲から
①ラヴェル:亡き王女の為のパヴァーヌ
ラヴェルはピアノで作曲した後にオーケストラ版を残しておりますが
始めからオーケストラを意識して作曲していたのではないかと言われております
楽譜はこんな感じです
右手で旋律を弾きながら 同じ右手で伴奏のようなこともしています
しかも旋律にスラーがついているのに 伴奏部分にはスタッカートやスタッカートテヌートがついております
この冒頭の弾き方はピアニストによってかなり違いがあり
また曲のテンポも「四分音符=54~70」とかなり幅があります
わりかしサラっと弾く人もいれば ゆったり弾く人もいて様々です
▼ピアノ あっさりタイプ
この方はわりかしあっさりしたテンポの演奏です
ペダルを控えめにしてスタッカートを意識している感じがします
▼ピアノ ゆっくりタイプ
この方はゆったり弾いていますが
ピッチカートは手の動きを見る限り 少し弾むように弾いています
しかし全体のスラーのイメージはちゃんと残っています
僕個人としてはこのタイプが好きです
▼オーケストラ版
旋律はホルンが 伴奏は弦楽器がピッチカート(指ではじく)で弾いています
もしオーケストラの響きをはじめから意識していたのなら
ピアノの楽譜も「弦楽器のピッチカートのようなイメージで弾いてほしい」
という意味でスタッカートを書いたのかもしれません
「テヌートもスラーもついてるのにスタッカートしろとか 表現が難しいわ!」
と思う人に オーケストラ版を聴かせると
「あぁ こういうイメージでやればいいのね」と腑に落ちるんじゃないでしょうか
続いてはオーケストラの曲
前回のベートーヴェン7番の冒頭です
最初の音にはスタッカートがついていますが
どんなふうに弾いているか比べてみましょう
▼テヌートっぽく聞こえるタイプ
テンポもゆっくりで音もなんだか粘っこい感じです
▼スタッカートっぽく聞こえるタイプ
今度はテンポは少し軽く 音も少し弾んでいます
弓のスピードを見てもこちらの方が俊敏ですね
この演奏では古楽器を使い ビブラートもほとんどかけないで演奏しているようです
このように 同じ曲でもそのテンポにあったスタッカートの奏法があったり
楽器によって あるいはホールによっても音の響きの違いがあります
スタッカートを控えめにしたり弾んでみたりと
全体のバランスを考え 空気を読みながらスタッカートを表現する必要があります
クラシック音楽は「再現音楽」と言われますが
楽譜さえあれば同じように再現できるわけではありません
楽譜通りに演奏できるロボットがあったとしても
曲調にあった奏法を考えて演奏できるのは人間だけです
スタッカートひとつ取っても つくづく音楽は生き物だなと思いますね
さて スタッカートに関するブログは今回で最終回です
次回からは「クラシック音楽をテーマにしたドラマ」
これをシリーズでお送りしたいと思います
このドラマを見れば きっとあなたも楽器を弾きたくなるはず!
それでは今日はこの辺で
ごきげんよう